行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

ファンド関連税制(PEとキャリード・インタレスト)

2022/07/14

令和4年7月8日に、金融庁から恒久的施設(PE)に係る「参考事例集」の一部改定と、キャリード・インタレストの税務上の取扱いに係る公表文の一部改定が公表されています。

両公表文は、政府の国際金融センター構想に呼応して、それぞれ令和2年、令和3年に発表された文書です。従来、不明確だったファンド運営に係る税務上の取り扱いに関して明確化したものです。

投資運用業者がPEに該当するか

PEは、海外投資家が本邦へのファンドへ投資する際の課税関係を検討する際、重要な概念です。

ファンド業者が「独立の地位を有する代理人」として認められれば、ファンドないしファンド業者は投資家の恒久的施設(PE)に該当せず、ファンドから分配される利益の課税関係が異なってきます。

基本的な考え方として、「投資一任契約において国内の投資運用業者に全部又は一部を一任される投資判断とは、「投資の対象となる有価証券の種類、銘柄、数及び価格並びに売買の別、方法及び時期についての判断又は行うべきデリバティブ取引の内容及び時期についての判断」であり、独立代理人の判定における法的独立性に関しては、これらの判断について国内の投資運用業者が十分な裁量権を有していることが重要である。」と示されています。

こうしたベースをもとに、投資運用業者が独立代理人に該当しなくなりPE課税されてしまうことになる具体的な態様の基準に関し、金融庁は以下のように示しています。

(ア) 国内の投資運用業者が投資一任契約において投資判断を一任されている部分が少なく、実質的に国外ファンドの組合員又は国外投資運用業者が直接投資活動を行っていると認められる
(イ) 国内の投資運用業者の役員の2分の1以上が、国外業務執行組合員又は国外投資運用業者の役員又は使用人を兼任している
(ウ) 国内の投資運用業者が、国外ファンド又は国外投資運用業者から投資一任を受けた運用資産の総額又は運用利益に連動した(当事者の貢献を反映した適切な)報酬を収受していない
(エ) 国内の投資運用業者がその事業活動の全部又は相当部分を国外ファンド又は国外投資運用業者との取引に依存している場合において、当該国内の投資運用業者が事業活動の態様を根本的に変更することなく、また、事業の経済的合理性を損なうことなしに、事業を多角化する能力若しくは他の顧客を獲得する能力を有していない(ただし、当該国内の投資運用業者が業務を開始した当初の期間を除く。)
(オ) 国外ファンドの組合員が国内の投資運用業者の特殊関係者に該当し、かつ、当該国内の投資運用業者が専ら又は主として当該国外ファンドの組合員に代わって行動しているなお、国外ファンドの国外業務執行組合員が国内の投資運用業者(代理人)と投資一任契約を締結した場合、組合契約事業の共同事業性から、当該国外ファンドの構成員ごとに、国内に恒久的施設(代理人PE)を持つかどうかの判定を行うことになる。このため、(オ)の要件を検討するにあたっては、国内の投資運用業者と国外ファンドの各構成員との間において、当該国内の投資運用業者が「専ら又は主として」特殊関係者に代わって行動しているといえるかどうか検討するのが適当である。

なお、「参考事例集」Ⅲ 具体的事例では、適用の事例が示されているほか、同Q&Aでは、リスク管理に関する指示、アセットアロケーションに関する指示、投資制限、投資方針、投資承認、情報交換、オーバーサイトに関して、許容される具体的な線引きが示されています。

なお、実務上、国内源泉所得としての本則課税を回避するため、国内の投資運用業者や第二種金融商品取引業者を利用するものの、実体的な投資の意思判断はすべて外国投資家側が掌握しているスキームを散見します。

しかし、参考事例集発表の以前から意識されていた通り、こうした海外投資家による投資運用業者等をダミーとした実質的な直接投資スキームは、税法上極めて不安定であることを、改めて明文で示したものであるといえます。

キャリードインタレスト

キャリードインタレストは、分離課税を享受できる出資対象事業である有価証券や金融先物投資を行っている任意組合や投資事業有限責任組合等の民法組合ベース集団投資スキームで、課税検討上、重要な概念です。

以前はその税法上の扱いは不明瞭でしたが、今ではファンド運用者に対する、経済合理的な様態での成功報酬的な性質を持つファンド分配金は、出資対象事業の内容に応じて、適用可能な場合には、キャピタルゲイン課税(分離課税)が享受できることが公表文で明示されています。

通常の所得税の最高税率は50%台であるところ、個人のファンドマネージャーの所得がキャピタルゲインとして認識されれば、所得税率を20%そこそこまで圧縮することができます。

なお、同公表文で、金融庁は「金融商品取引法に基づく投資運用業の届出等をしていることなどが必要」としており、レギュレーション枠内で稼働する業者のみを「制度的保証」の対象とすることを明らかにしています。

そのうえで、NK、LPSのようにいわゆるGP出資が存在すること、利益分配条項に基づくこと、その組合の組合契約はその組合の組合員全員の合意のもとに締結されたものであり且つその組合の組合員は他の組合員と利害の対立する複数の者により構成されていること、組合契約の内容が一般的な商慣行に基づいていること及びファンドマネージャーが投資組合事業に貢献していることが、キャリードインタレストによる分離課税を適用できる要件として定められています。

ここで、金融庁は、一般的な商慣行に関して、金融庁は「成功報酬料率が2割をファンドマネージャーに、残り8割をファンドマネージャー以外の組合員に分配するといった内容が盛り込まれている場合が多い」としています。従来、組合型ファンドの相場と考えられてきた、いわゆる「ツー・トゥエンティ」を是認していることが注目されます。

ちなみに、キャリードインタレストのキャピタルゲイン課税の適用の可否は、すなわち成功報酬的分配金に対する消費税の課税の有無にも関連する論点となります。

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