行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

特例業務対象投資家とは

適格機関投資家等特例業務の対象となる投資家とは

このページの目次
特例業務の概要:「適格機関投資家」と「特例業務対象投資家」特例業務対象投資家の定義特例業務対象投資家の要点用語の定義と混同に注意密接関係者とは投資に関して知識及び経験を有するもの国語辞典的な理解は危険
特例業務の実務:法人の該当性確認投資性金融資産とは客観的エビデンス確認は絶対に必要資産管理会社

特例業務の概要

「適格機関投資家」と「特例業務対象投資家」

適格機関投資家等特例業務は、ファンドの勧誘を行う第二種金融商品取引業と、ファンドの運用を行う投資運用業の特例の制度です。事前の届出を行うことにより、いわゆる「少人数プロ向けファンド」の私募と運用を行うことができます。

かつては、1名以上の適格機関投資家がいれば、49名以上の投資家に関して、属性は、ファンドオブファンズによる二層構造ヴィークル等の一定の例外的な形態の投資家を除いて、基本的に問われませんでした。

そのため、平成20年代前半から半ばにかけて適格機関投資家等特例業務届出者による一般投資家を相手方とした当社保護上の問題が頻発したことから、平成27年金融商品取引法改正で、適格機関投資家等特例業務であっても、プロ又はセミプロ以外からは出資を受けることができない制度改められました。

同改正以前は、49名以下の投資家に関しては、上記のように基本的に属性を問われませんでしたので、経過措置により同改正以前から運用を行っているファンドの継続運用は認められています。しかし、これを除いて、現在はプロ又はセミプロ以外からは出資を受けることはできません。

ここでのプロとは、金融商品取引法上の「適格機関投資家」をいい、セミプロとは「特例業務対象投資家」のことを指しています。金融商品取引法には、他に「適格投資家」や「特定投資家」などのプロ概念がありますが、これらは適格機関投資家等特例業務で、対象顧客としていいかどうかには、全く関係ありません。

「適格投資家」は、適格機関投資家等特例業務と似た名前ながらも全く別の制度である「適格投資家向け投資運用業」の対象顧客のことです。

また、「特定投資家」とは、契約締結前交付書面等の顧客交付書面、適合性の原則及び広告規制等の金融商品取引法の投資者保護のための行為規制が、当該金融商品取引業者との間で一部適用外となる、通称「プロアマ規制」にかかるプロ概念です。

金融商品取引法第63条第1項では、適格機関投資家等の概念を「適格機関投資家以外の者で政令で定めるもの(その数が政令で定める数以下の場合に限る。)及び適格機関投資家をいう。」と定義しています。この「政令で定めるもの」とは、特例業務対象投資家のことです。

つまり、適格機関投資家等特例業務とは、「適格機関投資家」及び「特例業務対象投資家」からなる「適格機関投資家等」について、「第二種金融商品取引業と投資運用業が要らない」特例の業務ということです。

特例業務対象投資家の定義

特例業務対象投資家の定義は、金融商品取引法施行令第17条の12及び金融商品取引業等に関する内閣府令第233条の2に以下のように定められています。条文上の定義は複雑怪奇ですが、実務上、頻繁に利用する項目にマークしたうえで、留意点を解説していきます。

(適格機関投資家等特例業務)
第十七条の十二 法第六十三条第一項第一号に規定する適格機関投資家以外の者で政令で定めるものは、適格機関投資家以外の者であつて、その取得する法第二条第二項第五号又は第六号に掲げる権利に係る私募又は私募の取扱いの相手方となる時点において、次の各号のいずれかに該当するものとする。

一 国
二 日本銀行
三 地方公共団体
四 金融商品取引業者等
五 法第二条第二項第五号若しくは第六号に掲げる権利に係る私募又は同項第五号若しくは第六号に掲げる権利を有する者が出資若しくは拠出をした金銭その他の財産について同条第八項第十五号に掲げる行為を業として行う者
六 前号に掲げる者と密接な関係を有する者として内閣府令で定める者
七 金融商品取引所に上場されている株券の発行者である会社
八 資本金の額が五千万円以上である法人
九 純資産の額(貸借対照表上の資産の額から負債の額を控除して得た額をいう。)が五千万円以上である法人
十 特別の法律により特別の設立行為をもつて設立された法人
十一 資産流動化法第二条第三項に規定する特定目的会社
十二 企業年金基金であつて、財産の状況その他の事情を勘案して内閣府令で定める要件に該当するもの
十三 外国法人
十四 財産の状況その他の事情を勘案して内閣府令で定める要件に該当する個人
十五 前各号に掲げる者に準ずる者として内閣府令で定める者

金融商品取引業法施行令

(適格機関投資家等特例業務の相手方)
第二百三十三条の二 令第十七条の十二第一項第六号に規定する前号に掲げる者と密接な関係を有する者として内閣府令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 当該前号に掲げる者(以下この項並びに第二百三十四条の二第一項第二号及び第二項第二号において「ファンド資産運用等業者」という。)の役員又は使用人
二 当該ファンド資産運用等業者の親会社等若しくは子会社等又は当該親会社等の子会社等
三 当該ファンド資産運用等業者が行う一のファンド資産(適格機関投資家等特例業務に係る出資対象事業持分を有する者から出資又は拠出を受けた金銭その他の財産をいう。次号において同じ。)の運用に係る権限の全部又は一部の委託を受けた者
四 当該ファンド資産運用等業者が一のファンド資産の運用として行うこととなる取引の対象となるもの(以下この号において「取引対象」という。)の価値等(取引対象の価値、オプションの対価の額又は取引対象に係る指標の動向をいう。以下この号において同じ。)若しくは価値等の分析に基づく投資判断(投資の対象となるものの種類、数及び価格並びに売買の別、方法及び時期についての判断又は行うべき取引の内容及び時期についての判断をいう。)に関し、口頭、文書(新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもので、不特定多数の者により随時に購入可能なものを除く。)その他の方法により助言を行うことを約し、当該ファンド資産運用等業者がそれに対し報酬を支払うことを約する契約を当該ファンド資産運用等業者と締結している者又は当該投資判断に関し、当該方法により助言を行うことを約し、当該者がそれに対し報酬を支払うことを約する契約を当該者と締結している者
五 前三号に掲げる者の役員又は使用人
六 当該ファンド資産運用等業者(個人である者に限る。)並びに第一号及び前三号に掲げる者の親族(配偶者並びに三親等以内の血族及び姻族に限る。)
2 令第十七条の十二第一項第十二号に規定する内閣府令で定める要件は、取引の状況その他の事情から合理的に判断して、その保有する資産(第六十二条第一項第一号ロ(1)から(8)までに掲げるものに限る。次項第一号イ及び第二号並びに第四項第二号から第四号までにおいて同じ。)の合計額が百億円以上であると見込まれることとする。
3 令第十七条の十二第一項第十四号に規定する内閣府令で定める要件は、次の各号のいずれかに該当することとする。
一 次に掲げる全ての要件に該当する個人であること。
イ 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、その保有する資産の合計額が一億円以上であると見込まれること。
ロ 当該個人が金融商品取引業者等(外国の法令上これに相当する者を含む。)に有価証券の取引又はデリバティブ取引を行うための口座を開設した日から起算して一年を経過していること。
二 業務執行組合員等(組合契約を締結して組合の業務の執行を委任された組合員、匿名組合契約を締結した営業者若しくは有限責任事業組合契約を締結して組合の重要な業務の執行の決定に関与し、かつ、当該業務を自ら執行する組合員又は外国の法令に基づくこれらに類する者をいう。以下この号及び次項第四号ロにおいて同じ。)であって、取引の状況その他の事情から合理的に判断して、当該組合契約、匿名組合契約若しくは有限責任事業組合契約又は外国の法令に基づくこれらに類する契約に係る出資対象事業により業務執行組合員等としてその保有する資産の合計額が一億円以上であると見込まれる個人であること(業務執行組合員等として取引を行う場合に限る。)。
4 令第十七条の十二第一項第十五号に規定する内閣府令で定める者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 その社員総会における議決権の総数の四分の一以上の数が国若しくは地方公共団体により保有されている公益社団法人又はその拠出をされた金額の四分の一以上の金額が国若しくは地方公共団体により拠出をされている公益財団法人であって、地域の振興又は産業の振興に関する事業を公益目的事業(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成十八年法律第四十九号)第二条第四号に規定する公益目的事業をいう。)とするもの
二 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、その保有する資産の合計額が百億円以上であると見込まれる存続厚生年金基金(改正前厚生年金保険法第百三十六条の三第四項に規定する年金給付等積立金の管理及び運用の体制が整備され、かつ、平成二十五年厚生年金等改正法附則第五条第一項の規定によりなおその効力を有するものとされる改正前厚生年金保険法第百七十六条第二項の規定による届出がされているものに限る。)
三 外国の法令上企業年金基金又は前号に掲げる者に相当する者であって、取引の状況その他の事情から合理的に判断して、その保有する資産の合計額が百億円以上であると見込まれる者
四 次に掲げる要件のいずれかに該当する法人
イ 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、当該法人が保有する資産の合計額が一億円以上であると見込まれること。
ロ 当該法人が業務執行組合員等であって、取引の状況その他の事情から合理的に判断して、組合契約、匿名組合契約若しくは有限責任事業組合契約又は外国の法令に基づくこれらに類する契約に係る出資対象事業により業務執行組合員等として当該法人が保有する資産の合計額が一億円以上であると見込まれること(業務執行組合員等として取引を行う場合に限る。)。
五 次に掲げる者の子会社等又は関連会社等
イ 金融商品取引業者等である法人
ロ 金融商品取引所に上場されている株券の発行者である会社
ハ 資本金の額が五千万円以上である法人
ニ 純資産の額(貸借対照表上の資産の額から負債の額を控除して得た額をいう。次条第二号において同じ。)が五千万円以上である法人
六 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、一の日において、次のイに掲げる金額に対するロ及びハに掲げる金額の合計額の割合が百分の七十以上であると見込まれる会社であって、代表者(令第十七条の十二第一項第十四号に掲げる者に該当する者に限る。以下この条において同じ。)のためにその資産を保有し、又は運用するもの
イ 当該一の日における当該会社の資産の帳簿価額の総額
ロ 当該一の日における次に掲げる資産(第八号において「特定資産」という。)の帳簿価額の合計額
(1) 有価証券であって、当該会社の特別子会社の株式又は持分以外のもの
(2) 当該会社が現に自ら使用していない不動産(不動産の一部分につき現に自ら使用していない場合は、当該一部分に限る。)
(3) ゴルフ場その他の施設の利用に関する権利(当該会社の事業の用に供することを目的として有するものを除く。)
(4) 絵画、彫刻、工芸品その他の有形の文化的所産である動産、貴金属及び宝石(当該会社の事業の用に供することを目的として有するものを除く。)
(5) 現金及び国内の金融機関に対する預貯金その他これらに類する資産
ハ 当該一の日以前の五年間において、当該会社の代表者及び当該代表者に係る同族関係者に対して支払われた剰余金の配当等(株式又は持分に係る剰余金の配当又は利益の配当をいう。)及び給与(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む。)のうち法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第三十四条及び第三十六条の規定により当該会社の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されないこととなるものの金額
七 外国出資対象事業持分の発行者(当該権利を有する者が適格機関投資家、出資対象事業持分の発行者、令第十七条の十二第一項第一号から第十四号までに掲げる者又は前各号若しくは次号に掲げる者である場合に限る。)
八 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、一の事業年度における総収入金額に占める特定資産の運用収入の合計額の割合が百分の七十五以上であると見込まれる会社であって前各号に掲げる者のためにその資産を保有し、又は運用するもの
5 前項第六号ロ(1)の「特別子会社」とは、会社並びにその代表者及び当該代表者に係る同族関係者が他の会社(外国会社を含む。)の総株主等の議決権の百分の五十を超える議決権を有する場合における当該他の会社のうち、次に掲げる要件のいずれにも該当しないものをいう。
一 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、資産の帳簿価額の総額に対する有価証券(当該他の会社並びにその代表者及び当該代表者に係る同族関係者が他の会社(外国会社を含む。)の総株主等の議決権の百分の五十を超える議決権を有する場合における当該他の会社の株式又は持分を除く。)及び前項第六号ロ(2)から(5)までに掲げる資産(次号において「特別特定資産」という。)の帳簿価額の合計額の割合が百分の七十以上であると見込まれること。
二 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、当該一の日の属する事業年度の直前の事業年度における総収入金額に占める特別特定資産の運用収入の合計額の割合が百分の七十五以上であると見込まれること。
6 第四項第六号ハ及び前項の「同族関係者」とは、当該会社の代表者(代表者であった者を含む。以下この項において同じ。)の関係者のうち次に掲げるものをいう。
一 当該代表者の親族
二 当該代表者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
三 当該代表者の使用人
四 前三号に掲げる者以外の者で当該代表者から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
五 前三号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族
六 次に掲げる会社
イ 代表者等(当該代表者及び当該代表者に係る前各号に掲げる者をいう。ロ及びハにおいて同じ。)が会社の総株主等の議決権の百分の五十を超える議決権を有する場合における当該会社
ロ 代表者等及びこれとイの関係がある会社が他の会社の総株主等の議決権の百分の五十を超える議決権を有する場合における当該他の会社
ハ 代表者等及びこれとイ又はロの関係がある会社が他の会社の総株主等の議決権の百分の五十を超える議決権を有する場合における当該他の会社

金融商品取引業等に関する内閣府令

特例業務対象投資家の要点

要点から順に把握していただきたいので、ポイントの説明から入ります。

いわゆる機関投資家を相手としない限りは、勧誘の対象になるのは「証券口座開設1年以上、有価証券等の投資性金融資産(不動産及び現金含まず)1億円以上の個人」「投資性金融資産1億円以上の法人」「資本金5000万円以上の法人」又は「純資産5000万円以上の法人」の属性であることが多いです。

これ以外の属性の投資家は、比較的出現頻度が低いうえ、「資産管理会社」のように、一見使えそうに見えながらも、要件が複雑怪奇過ぎて、極論するとあまり役立たない属性ばかりです。

主に富裕層及び事業法人相手に適格機関投資家等特例業務を行いたい場合は、それ以外の特殊な属性を把握するよりも、むしろこの基本の4属性の概念と注意点をしっかり把握した方が間違いが起きません。

これら属性に当てはまる投資家かどうかは、客観的資料で必ず書面確認する必要があります。口頭申告、自己申告、同意等の方法では確認したことになりません。客観的な資料で裏付けを証明できない場合、結果的に金融商品取引法違反が生じたことを指摘されても、態勢不備の申し開きをすることはできません。

それ以外に役職員や親子会社等の密接関係者も特例業務投資家としてよく出てきますが、「当該特例業者と密接な関係を有する者」及び「投資に関する事項について知識及び経験を有するもの」からの出資割合が出資総額の2分の1以上である場合には、適格機関投資家等特例業務として認められませんので注意が必要です。

用語の定義と混同に注意

出現頻度が低い属性に関しては、用語を正確に把握することが必要です。密接関係者、知識及び経験を有するもの、資産管理会社等の通称の言葉に引っ張られて、「この会社は代表者の資産を管理していると聞いたから決算書を見ないでも認めて大丈夫だろう」という国語辞典的な主張を耳にすることがありますが、基本的に法令には定義がない言葉はありません。

例えば、通称・資産管理会社の要件は前掲の金融商品取引業等に関する内閣府令第233条の2第4項第6号に定義がありますが、読んでいただければわかるように、ゴルフ会員権や絵画などが定義に登場する複雑怪奇な概念です。資産管理会社に関しては、のちの項目で詳しく説明します。

密接関係者とは

密接関係者についても、当該特例業者と密接な関係を有する者と決まっており、当該特例業者の役員・使用人、親会社等・子会社等(当該親会社等の子会社等を含む)、運用委託先、投資助言者(当該者に投資助言を行う者を含む)、当該特例業者の親会社等・子会社等・運用委託先・投資助言者の役員又は使用人、当該特例業者・当該特例業者の役員又は使用人・当該特例業者の親会社等・子会社等・運用委託先・投資助言者の役員又は使用人の親族(3親等)とされています。

仲がいい人、友達などの意味ではありません。定義の正確な把握が必要です。また、上記の定義に当てはまっていても、それ以外の特例業務対象投資家の本来的な要件にも該当する投資家、例えば、証券口座開設1年以上、有価証券等の投資性金融資産(不動産及び現金含まず)1億円以上の自社役員の場合には、1/2規制の対象になりません。

投資に関して知識及び経験を有するもの

投資に関して知識及び経験を有するものに関しても、単に物知りを指すものではありません。上記同様に、特例業務対象投資家の本来的な要件には該当しない投資家ではあるものの、ベンチャーファンド特例のファンドに限って出資が認められる、一定のベンチャー関係者を指します。

具体的には、以下の通りです。

(投資に関する事項について知識及び経験を有する者)
第二百三十三条の三 令第十七条の十二第二項に規定する内閣府令で定めるものは、その取得する出資対象事業持分に係る私募又は私募の取扱いの相手方となる時点において、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 金融商品取引所に上場されている株券の発行者である会社の役員
二 資本金の額又は純資産の額が五千万円以上である法人であって法第二十四条第一項の規定により有価証券報告書(同項に規定する有価証券報告書をいう。第九号において同じ。)を提出しているものの役員
三 前条第四項第四号ロに掲げる要件に該当する法人の役員
四 当該私募又は私募の取扱いの相手方となる日前五年以内に前三号に掲げる要件のいずれかに該当していた者
五 当該私募又は私募の取扱いの相手方となる日前五年以内に、前号又はこの号に該当する者として、当該出資対象事業持分と同一の発行者が発行する出資対象事業持分を取得した者
六 当該私募又は私募の取扱いの相手方となる日前五年以内に前条第四項第四号ロに掲げる要件に該当する法人であった者
七 次に掲げる業務のいずれかに、会社の役員若しくは従業者(特に専門的な能力であって当該業務の継続の上で欠くことができないものを発揮して当該業務に従事した者に限る。)又は会社との間で当該業務の助言を行うことを約し、当該会社がそれに対し報酬を支払うことを約する契約を締結した者として従事したと認められる期間が通算一年以上であって、当該業務に最後に従事した日から当該私募又は私募の取扱いの相手方となる日までの期間が五年以内である者
イ 会社の設立、募集株式若しくは募集新株予約権を引き受ける者の募集又は新事業活動(会社が現に行っている事業と異なる種類の事業であって、新商品の開発又は生産、新役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入、技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動をいう。)の実施に関する業務
ロ 合併、会社の分割、株式交換、株式移転、株式交付、事業の譲受け若しくは譲渡又は他の会社の株式若しくは持分の取得に関する業務
ハ 発行株式の金融商品取引所への上場に関する業務
ニ 会社の経営戦略の作成、貸借対照表若しくは損益計算書の作成又は株主総会若しくは取締役会の運営に関する業務
八 当該私募又は私募の取扱いの相手方となる日前五年以内に提出された有価証券届出書(金融商品取引所に発行株式を上場しようとする会社が提出するものに限る。)において、株式の所有数の上位五十位までの株主として記載されている者
九 当該私募又は私募の取扱いの相手方となる日前五年以内に提出された有価証券届出書(前号に規定するものを除く。)又は有価証券報告書において、株式の所有数の上位十位までの株主として記載されている者
十 認定経営革新等支援機関(中小企業等経営強化法(平成十一年法律第十八号)第三十一条第二項に規定する認定経営革新等支援機関をいう。)
十一 前各号(第六号を除く。)のいずれかに該当する個人に係る次のいずれかに該当する会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。以下この号及び次号において「会社等」という。)
イ 当該個人が総株主等の議決権の百分の五十を超える議決権を保有する会社等(当該会社等の子会社等及び関連会社等を含む。)
ロ 当該個人が総株主等の議決権の百分の二十以上百分の五十以下の議決権を保有する会社等
十二 第一号から第十号までのいずれかに該当する会社等の子会社等又は関連会社等

金融商品取引業等に関する内閣府令

国語辞典的な理解は危険

適格機関投資家等特例業務は、一見簡単に見えて実は非常に複雑です。

それが簡単に見える理由の一つにおそらくは国語辞典的な理解で、業務ができそうに見えることもその一因であるように思えます。さらに言えば、特定投資家制度、少人数私募や適格投資家向け投資運用業等の、似て非なる、混同すると却って理解を妨げる制度が多数存在することも誤解に拍車をかけているように思われます。

そのため、むしろ証券会社等で少人数私募等の実務経験がある方が混同により誤りを生じやすい面すらあります。適格機関投資家等特例業務を行うにあたっては、いったん予備知識を忘れ、かつ、国語辞典を捨てたほうが安全です。

特例業務の実務

法人の該当性確認

「投資性金融資産1億円以上の法人」「資本金5000万円以上の法人」又は「純資産5000万円以上の法人」の確認のうち、投資性金融資産1億円以上の法人の確認は、下記の通り、当該法人が保有する投資性金融資産額を確認すればいいだけなので、さほど難しくないです。

これに対して、「資本金5000万円以上の法人」又は「純資産5000万円以上の法人」については、前者に関しては登記事項証明書、後者に関しては、直近決算書又は試算表の取り寄せが必要になると解されます。

登記事項証明書で客観的に誰でも確認できる資本金はともかくとして、法人の純資産金額は、自己申告等の客観性を欠く手法では認められません、

投資性金融資産とは

個人又は法人の特例業務対象投資家の該当性の検討要素のひとつである「投資性金融資産」の定義は、金融商品取引業等に関する内閣府令第233条の3第2項において「第62条第1項第1号ロ(1)から(2)までに掲げるものに限る。」とされています。

これは、特定投資家判定上の投資性金融資産と同一です。まずは、以下に同(1)から(8)を引用します。

(1) 有価証券((5)に掲げるもの並びに(6)及び(8)に掲げるものに該当するものを除く。)
(2) デリバティブ取引に係る権利
(3) 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十一条の五に規定する特定貯金等、水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第十一条の十一に規定する特定貯金等、協同組合による金融事業に関する法律(昭和二十四年法律第百八十三号)第六条の五の十一第一項に規定する特定預金等、信用金庫法(昭和二十六年法律第二百三十八号)第八十九条の二第一項に規定する特定預金等、長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第十七条の二に規定する特定預金等、労働金庫法(昭和二十八年法律第二百二十七号)第九十四条の二に規定する特定預金等、銀行法第十三条の四に規定する特定預金等、農林中央金庫法(平成十三年法律第九十三号)第五十九条の三に規定する特定預金等及び株式会社商工組合中央金庫法(平成十九年法律第七十四号)第二十九条に規定する特定預金等
(4) 農業協同組合法第十一条の二十七に規定する特定共済契約、消費生活協同組合法(昭和二十三年法律第二百号)第十二条の三第一項に規定する特定共済契約、水産業協同組合法第十五条の十二に規定する特定共済契約、中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の七の五第二項に規定する特定共済契約又は保険業法第三百条の二に規定する特定保険契約に基づく保険金、共済金、返戻金その他の給付金に係る権利
(5) 信託業法第二十四条の二に規定する特定信託契約に係る信託受益権((8)に掲げるものに該当するものを除く。)
(6) 不動産特定共同事業法(平成六年法律第七十七号)第二条第三項に規定する不動産特定共同事業契約に基づく権利
(7) 商品市場における取引(商品先物取引法(昭和二十五年法律第二百三十九号)第二条第十項に規定する商品市場における取引をいう。第三号ヘにおいて同じ。)、外国商品市場取引(同条第十三項に規定する外国商品市場取引をいう。同号ヘ及び第六十七条第一号において同じ。)又は店頭商品デリバティブ取引(同法第二条第十四項に規定する店頭商品デリバティブ取引をいう。以下同じ。)に係る権利
(8) 電子決済手段等取引業者に関する内閣府令(令和五年内閣府令第四十八号)第四十三条各号に掲げるもの

金融商品取引業等に関する内閣府令

円建ての預金や不動産は含まないことに注意しましょう。他方で、特定預金等が含まれるため、デリバティブ性がある預金や、外貨預金などのリスクが高い預金は、投資性金融資産に含むことができます。日本円よりも明らかに資産価値が安定しているドルやユーロ建ての預金は算入できるのに、円建ての預金は算入できないとはおかしな話ではあります。

いずれにせよ、実務上は投資性金融資産≒有価証券(株式・投資信託等)と思っておいた方が誤りがないと思います。デリバティブ取引のポジションや、不動産特定共同事業法に基づく現物不動産ファンドを、継続的にかつまとまって保有している法人や個人が、そう多くいるとは思えません。

なお、未上場有価証券について、金融庁は「取引の状況その他の事情から合理的に判断して、その保有する資産が1億円以上であると見込まれることの確認方法につき、資産に未上場企業の株券が含まれる場合には、その評価方法はどのように考えればいいのか。DCF法、純資産法等複数の評価方法が考えられるが、その評価方法が合理性を有する限りは、当事者により評価方法を選択し、評価価格の計算を行い、結果、当該保有者の保有額が1億円を超えている場合には、当該保有者は、適格機関投資家等特例業務の対象としていいと考えていいのか。」の問いに対して、「基本的には市場価格によるものと考えられますが、非上場株式のように市場価格の算定が困難な資産等については、一般に当該資産等の評価のために用いられる方法により算出される価格や簿価を用いることも可能と考えられます。」と回答しており、未上場有価証券を評価額に参入することを認めています。(平成27年2月3日「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」P27 No.91)

客観的エビデンス確認は絶対に必要

なお、投資性金融資産は、客観的資料で確認する必要があります。具体的には、証券会社の取引残高報告書や、投資家名が掲載されている有価証券報告書等が挙げられますが、状況によりケースバイケースです。

金融庁は、「保有する資産の合計額が1億円以上であると見込まれること」(金商業等府令第233条の2第3項第1号イ)の判断は、外形的に明らかな場合を除き、自己申告のみで確認するのではなく、顧客が任意に提供した資料(例えば、取引残高報告書又は通帳の写し等)を活用することにより、全体として「合理的に判断」(同)して要件の充足性を確認する必要があると考えられます。(前掲P20 No.77)としています。

また、個人の場合は、金融商品取引業者等(外国の法令上これに相当する者を含む。)に有価証券の取引又はデリバティブ取引を行うための口座を開設した日から起算して一年を経過していることの要件もあるので注意しましょう。投資性金融資産を1億円以上保有している方で、かつ適格機関投資家等特例業務のファンドに出資しようという方で、証券口座がないという投資家は実際にはあまりいないと思いますが、該当要件ですので確認が必要です。

もっとも、金融庁は、「取引口座開設日から1年を経過していることも、過去に取引を行ったことを示す書類が提示されるなど、客観性を持って確認されることが必要である」とのパブリックコメントで寄せられた意見(前掲P22 No.82)に対して、「保有する資産の合計額が1億円以上であると見込まれること」(金商業等府令第233条の2第3項第1号イ)の判断は、外形的に明らかな場合を除き、自己申告のみで確認するのではなく・・」とのみ回答し、1年要件に関しては、正面からコメントをしていません。これを見ると、取引口座開設日から1年要件は自己申告でも許される余地があるように思えます。

資産管理会社

前記の通り、資産管理会社の要件は前掲の金融商品取引業等に関する内閣府令第233条の2第4項第6号に定義があります。その内容は、実質的に「代表者の個人資産管理会社」とみなし得る法人を抽出するための判定基準です。特例業務対象投資家になる資産管理会社の代表者は、本来的な「証券口座開設1年以上、有価証券等の投資性金融資産(不動産及び現金含まず)1億円以上の個人」である場合に限られます。

つまり、個人としても特例業務対象投資家である代表者が、資産管理会社会社名義で出資するという場合に限定されます。よって、「本来は取れないはずの弱い属性の顧客が、「資産管理会社」名義であれば新たに顧客として取れるようになる」ことは、ありません。

資産管理会社に該当するかどうかの判定式は、以下のようになります。

( ロ + ハ ) ÷ イ ≥ 70%
イ:会社の総資産簿価
ロ:特定資産(非事業性の資産)の簿価合計
ハ:過去5年間に代表者・同族へ支払った「損金不算入の配当等・給与」額の合計

ここでいう特定資産とは、特別子会社の株式又は持分以外の有価証券、当該会社が現に自ら使用していない一定の不動産、 非事業性のゴルフ場その他の施設の利用に関する権利 、非事業性の絵画、彫刻、工芸品その他の有形の文化的所産である動産、貴金属及び宝石、現金及び国内の金融機関に対する預貯金その他これらに類する資産です。

この資産管理会社要件を利用するには、代表者が個人としても特例業務対象投資家であることが前提になりますので、まずは個人の要件確認ありきです。個人の要件充足が確認できた段階で、はじめて資産管理会社名義でも出資することが可能かどうかの検討に移行することができます。

 

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