行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

貸付型ファンドの制度改正議論

2022/05/19

貸付型ファンドの制度改正の方向性

令和4年4月21日に金融庁から公表された金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第16回)議事録では、第二種金融商品取引業を行う貸付型ファンド事業者に関し、規制強化へ向けた厳しい見方が示されています。こうした議論は、既存のソーシャルレンディング大手各社で連続して発生した不祥事を受けた規制強化の検討です。ソーシャルレンディング業界としても制度改正の必要性に関する認識性自体は行政当局と共有されています。

そのため、焦点は金融審議会の審議を通じ、民間活力を削がず成長資金の供給を実現する透明性な制度をいかに実現するかです。

ディスカッションの問題意識

議事録では神田座長から「不正事案関係でございますが、投資信託やソーシャルレンディング等をめぐる不正事案を踏まえて、投資家保護を確保するための措置を講じることが必要という問題意識に立ちまして、(2)と(3)に記させていただいております。(2)投資運用業者等の受託者責任の明確化を通じた運用財産の運用・管理のあり方ということで、投資先における運用財産の運用・管理状況を把握していない不適切な事例の発生を踏まえ、受託者である信託銀行を含め、運用財産の運用・管理状況の把握のためにどのような取組が必要かということでございます。

それから、(3)二種ファンドの募集・運用の適切性を確保するためのルールの見直しでございますが、こちらも13回会合で御議論もいただきましたが、投資家への情報提供、貸付先に対する審査やモニタリング等の不適切な事例の発生を踏まえ、どのような取組が必要かということでございます。」との問題意識に関する発言があり、今回の議論は、投資運用業者及びソーシャルレンディング事業者の直近数年で発生した一連の不祥事を踏まえた制度改正議論であることを明らかにしています。

電子募集取扱業務への包含?

これに対し有吉委員は、ソーシャルレンディングでは電子募集取扱業務等に基づく規制が免除されるなど緩和的な制度が採用されていることに対して、批判的な見解を示しています。

具体的には同委員は「ソーシャルレンディングと呼ばれるスキームの中でも、特に不動産とか、再生可能エネルギー施設とか、こういったものへの投資を目的とするスキームについては、行政処分にまで至ってしまった不祥事例というのも複数出ているところでございます。また、クラウドファンディングの特有の要素である共感とか、応援といった要素が希薄なタイプの投資スキームではないかと思います。つまり、純粋に投資目的で資金が出されるというスキームであると思いますので、投資者保護的な観点を緩める合理性というのは高くない投資スキームではないかと感じます。したがいまして、少なくても他のクラウドファンディングの類型と同様に、電子募集取扱業務に対する行為規制は適用される形に改めることが必要であると思いますし、場合によっては販売勧誘の場面だけではなくて、期間中のファンドの運営に対しても、運営者なのか、販売業者なのか分かりませんが、受託者責任を求めるような規制を適用するということもしっかり検討していくべきではないかと感じます。」としており、行為規制の強化を提唱しています。

検査、監査の現況

現状について、オブザーバーとして参加している第二種金融商品取引業協会からは、ソーシャルレンディングを行っている事業者の数は多くはなく、そうしたところを中心に監査を行っているとの発言がありました。

これは、客観的に見て事実であって、協会に限らず金融庁・財務局も同様ですが、当局は貸付型ファンド事業者に対して、ここ数年、極めて密度の高い検査、監査を実施しています。

これは、一定程度透明性の担保であると同時に、第二種金融商品取引業のソーシャルレンディング業態がそれだけ投資者保護上のリスクが高い業態であることを示しています。

業規制の在り方

続く議事録で原田委員は「二種ファンド。これについてのルール策定はどう考えるかと書いていただいている論点ですけれども、ソーシャルレンディングを含む事業型のファンドは投資運用業の適用除外でありますが、適用除外になっている投資運用業ではない二種ファンドというのはかなりたくさんあるのではないかと感覚的に思うんですけれども、どのくらい多いかは分からないのですが、投資運用と類似するファンドというふうにここでは、今日の資料が書かれていますけれども、投資家から見ればそれらも投資運用ファンド、投資ファンドであるはずで、そういう意味では投資家を守るルールの策定が必要であることは間違いないですけれども、ただモニタリングのあり方一つとってもかなり難しいのではないかと思っております。」として、投資運用業と類似する経済的な実態を持ちながら、私募行為のみが業規制の対象となっている第二種金融商品取引業の構造自体に問題意識を投げかけています(参考:当該法の欠缺につき拙稿)。

さらに、井口委員は「(3)の二種ファンドの募集・運用の特にソーシャルレンディングにつきましては、前回も申し上げましたが、過去の不祥事の事例を見ますと、集められた資金が顧客に説明したとおりに行われていないということが主な不祥事の内容と理解しておりますので、当局には既に開示においてガイダンス等を出していらっしゃるとは理解しておりますが、今後とも最終投資家が投資判断を行う上で重要な事項を可能な限り開示させる制度設計が必要ではないかと考えております。」と発言しており、開示制度の充実に向けた方向性を提言しています。

規制の方向性

現在のところ、方向性としては貸付型ファンドを電子募集取扱業務に包含させるというよりは、貸付型ファンドに対する規制枠組みを維持したうえで、行為規制を強化するのが金融庁の方向性であると言われています。これは、電子申込型電子募集取扱業務にかかる禁止行為とソーシャルレンディング業界の社会実行の間のギャップが大きいこと等を斟酌したうえで、ソーシャルレンディングに対する現状の規制の大枠を維持したうえで、行為規制を強化する方向であるといえます(参考:ソーシャルレンディング規制につき拙稿)。

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