行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

投資助言・代理業及びソーシャルレンディング等に関する制度改正議論

2022/06/04

令和4年5月20日に開催された金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第18回)議事次第では、「販売・助言サービスの態様に応じた制度の柔構造化」として、以下のような制度改正が提議されています。

投資助言・代理業

具体的な内容としては、主に第一種金融商品取引業者が投資助言・代理業を兼業するケースを視野に入れて、以下の規制緩和が検討されています。

(1)証券会社等においては、重要な使用人である「金融商品の価値等の分析に基づく投資判断を行う者」の届出義務について、重要な使用人と同等の適格性を確保されている者(当該事業者の外務員として登録されている者など)については、その氏名の記載を省略することを可能とすること

(2)投資顧問契約やその代理・媒介に係る契約締結前交付書面・契約締結時交付書面において「金融商品の価値等の分析又は当該分析に基づく投資判断を行う者」及び「助言の業務を行う者」の氏名を記載することになっているところ、書面上は部署の名称及び当該部署を統括する者の氏名の記載で代替することを可能とすること。

(3)「投資顧問契約に基づく助言の内容を記載した書面」につき、書面だけではなく、録音データその他の方法による作成・保存を可能とすること。

また、その他の問題意識として、「投資顧問契約に基づく助言の内容を記載した書面」に関して、記載すべき事項やその内容等が明確でないこと、第一種金融商品取引業者が届出業務として行っている貸付け等も、投資助言業を兼業した場合は禁止されることとなること等が論点として挙げられています。

また、より大きな規制体系に関する論点として、証券会社が販売を投資助言を同時に行う場合に、こうした販売・助言サービスに適用されるルールに大きな違いが生じないよう、助言・推奨に関する制度的枠組みについて、その柔構造化の可能性も含めて検討していくことが打ち出されています。

第二種金融商品取引業・ソーシャルレンディング

いわゆる貸付型ファンドに関しては、投資運用業者が運用する有価証券投資型ファンドと同様に、善管注意義務や忠実義務、投資家に対する追加的な情報提供を含めた運用行為に係る行為規制を新設するべきであると提議されています。

また、現在、電子申込型電子募集取扱業務にのみ適用されている、ファンドの事前の適切な審査や投資家に対する事業の状況の定期的な情報提供等といった業務管理体制に関する制度について、現在規制の適用外であるソーシャルレンディングやインターネットで完結する自己募集についても整備することとされています。

こうした事項は、協会自主規制や行政解釈等によりすでに実務上、ある程度の手当てがなされてきたことではありますが、これを法令の形で明確化するという方向性が示されました。

投資運用業

投資運用業に関しては、いわゆるファンドオブファンズのケースで、運用財産の運用・管理状況について、投資先のファンドのリスクの高さに応じて、受託者責任を負う投資運用業者や信託銀行が必要な資料(残高証明書や約定記録等)を入手・確認するよう、制度面を含め必要な見直しを検討していくとしています。

これは、現在ガイドラインである監督指針である程度手当てされている事項ですが、これを法令に落とし込むという方向性が示されました。

PTS・セキュリティトークン

非上場有価証券のPTSに関しても今回の論議の対象となっています。STO協会が意見書で、セキュリティトークンのPTSや証券会社によるデジタル店頭取引を含めたデジタル証券の流通市場の活性化に向けた必要な措置を求めていることが注目されます。

現在、セキュリティトークン市場は流通性がないことが大きな商品性の制約になっており、遅かれ早かれセキュリティトークンの流通性の確保は重要な政策課題として立ち上がってくるものと思われます。

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