2021/04/08
金融庁は、4月2日付で、金融機関等における在宅勤務についてを公表しました。
新型コロナウイルスの感染拡大の下で急速に進んだリモートワークに関して、金融庁の考え方を示すものとして注目されます。短文なので、全文引用します。
○ 今般、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、感染拡大防止の目的等を理由に在宅勤務態勢を整備した金融機関等も多いと思われます。
○ そうした中、金融機関等においては、従業員が本店や営業所等ではなく日本国内の自宅等において在宅勤務を実施する場合には、自宅等を追加的に営業所等として当局に届け出る必要はないと考えられますので、周知するものです(※)。在宅勤務体制においても、業務の適切性、法令遵守等が確保される必要があると考えられます。
(※)銀行法第8条等に基づく銀行の営業所の設置届、金融商品取引法第29条の2等に基づく金融商品取引業者の営業所の登録申請書 等
○ ここに記載する他にも、今般の新型コロナウイルス感染症の影響により実務上の支障が生じているなど、お困りのことがございましたら、ご遠慮なく金融庁又は所管の財務(支)局までご相談ください。
このリリースから読み取れる実務上重要な事項としては(1)リモートワークでの自宅勤務でも自宅を営業所とする必要はない(2)在宅勤務体制でも、業務の適切性、法令遵守等を確保できればよいという2点に絞られると思います。
(1)に関しては、営業等の担当役職員の自宅全部を営業所として届出するのは現実性に欠き、また、社会通念の観点からも考えられないことです。しかしながら、現在の銀行法、金融商品取引法等を杓子定規に解すると、各自の自宅で営業を行っているのであれば各自の自宅を届出すべきではないかという議論がありえます。そこで、今回の解釈が明示された格好です。
(2)に関しては、例えリモートワークであっても、業務の適切性及び法令遵守等を確保する必要があるという要請である一方で、業務の適切性及び法令遵守等を確保できれば、リモートワーク主体でも業務の適切性及び法令遵守等に関する体制を構築しうることを示すものでもあります。
金融商品取引業の登録要件にかかる人的構成における役職員の常勤性は、以前から実務上の重要な論点です。常勤とみなされるためには、週何日出勤しなければいけないのか、また、リモート勤務では常勤性を満たすことができないのかという議論が以前から存在してます。
今回のリリースでは直接の言及はありませんが、リモートワークであっても、業務の適切性及び法令遵守等を確保できれば常勤としうるとの解釈の一助になるものと考えられます。