2021/01/29
本日付で金融庁から、昨年の12月18日に開催された金融審議会「最良執行のあり方等に関するタスクフォース」の第1回議事録が公開されました。
昨年発生した東京証券取引所の終日取引停止を受けて、従来の過度な取引所取引への集中が政策的な課題となりました。そのため、さらなるPTSの活用策を含む最良執行方針等に関する規制の改正が導入が、今回のタスクフォースのテーマです。
タスクフォースの検討課題に関して、事務局は「注文執行のあり方」「機関投資家に対する最良執行方針等」「個人投資家に対する最良執行方針等」3つの論点に分けて、以下のように整理しています。
「注文執行のあり方」については、(1)投資家の利益を踏まえて注文を執行するに当たり、証券会社が考慮すべき要素にはどのようなものがあるのか、価格、コスト、スピード、執行可能性などが言われてるところ、ほかにこれらも含めてどのようなものがあるのか(2)投資家から執行方法に関する指示がある場合について、証券会社は当該指示に基づいて執行すれば足りると考えられるのかという論点が挙げられています。
「機関投資家に対する最良執行方針等」については、「最良執行義務」の内容として、制定時の金融審議会の報告で書かれた「大多数の投資家にとって取引所で執行することが利益に合致している実情を踏まえ、価格のみならず、コスト、スピード、執行可能性など様々な要素を総合的に勘案して執行する義務」とという定義を、SORの普及やPTSのシェアの上昇などといった環境変化を踏まえて見直す点があるのかという論点が挙げられています。
「個人投資家に対する最良執行方針等」については、上記の論点に加え、個人投資家の最良執行方針等について(1)SORのメリットである価格改善等、デメリットであるコスト等があるがそれについてどう考えるか(2)個人投資家に対してSORのサービスを提供していない証券会社、PTSの取引参加者ではない証券会社は、SORは使っていないと思われるが、こうした証券会社における最良執行についてどのように考えるか(3)個人投資家と高速取引行為者との間のスピード格差が市場に与える影響についてどのように考えるか、時間差から生じる価格差を利用した投資戦略についてどのように考えるかといった検討課題を提示しています。
これらの議論を踏まえて予想される最良執行方針等に係る制度改正は、とりわけ上場株を扱う証券会社にとっては、実務上大きな影響があります。タスクフォースでは、機関投資家と個人投資家ではっきりと分けて議論が進んでおり、個人客を中心とするいわゆる地場証券等にどの程度の影響がある改正になるかは、現時点では定かではありませんが、議論の行く先を慎重に見守る必要があります。