行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

銀行業務範囲の拡大

2020/01/22

令和2年12月16日に開催された、金融審議会「銀行制度等ワーキング・グループ」(第7回)の議事録が令和3年1月19日に公開されました。

議事次第は、既に令和2年12月16日に公表されていましたが、議事録の公表でその議論の詳細が明らかになりました。

報告案では銀行子会社・兄弟会社のうち、銀行業高度化等会社の範囲が拡充され、デジタル等に加え、地方創生などの持続可能な社会の構築が追加されています。

また、現在の高度化等会社の下で営まれている、フィンテック、地域商社、従属業務の下で営んでいるアプリやITシステムの販売、データ分析・マーケティング・広告、登録型人材派遣、ATM保守点検は、通常の子会社・兄弟会社認可として位置付けられています。

これに加え、持続可能な社会の構築という観点から、障害者雇用促進法に係る特例子会社、地域と連携した成年後見業務を通常の子会社・兄弟会社認可のカテゴリーに追加する一方、財務健全性、ガバナンスが十分なグループが銀行の兄弟会社において当該業務を営む場合は、認可不要となり、届出制にするとのことです。また、従属業務会社は、50%以上の数値基準を削除することになっています。

さらに、銀行本体も、銀行業の経営資源を活用して行う限り、アプリやITシステムの販売、データ分析・マーケティング・広告、登録型人材派遣、幅広いコンサルティング・マッチング、ビジネスマッチング等を営むことが可能になるとされています。

銀行からの事業会社への出資規制関連については、銀行傘下の投資専門会社によるコンサル業務が可能になります。さらに事業再生会社・事業承継会社やベンチャービジネス会社の出資可能範囲・期間の拡充が図られます。地域活性化事業会社については、現行50%までの議決権保有制限を100%まで引き上げるとされています。

また、外国金融機関等の買収に際して、日本の銀行法の業務範囲の枠外にある業務を営む子会社がある場合、現地の競争上必要があれば、子会社の恒久的な保有を認めることになりました。一般事業を兼営する外国リース業や貸金業についても同様の仕組みにするとのことです。

日本の銀行法の業務範囲の枠外にある業務は5年以内に基本的に整理するのが従来の枠組みでした。

今回の報告書案では、業務範囲規制に抵触するものであっても、一律に、買収後 10 年間は業務範囲規制の適用を猶予し、その後については、現地における競争上の必要性があれば、10 年間の猶予期間内に承認を受けることで、期間の制限なく継続的に保有することを認めるとしており、さらにこれ以外の場合でも、止むを得ない事情があれば、1年ごとに承認を受けることで売却までの間、業務範囲規制の適用を猶予するとしています。

これは、従来厳しく制限されていた、銀行の「事業会社化」を推し進める大規模な規制緩和であり、銀行の金融コングロマリット化につながる可能性を秘めた改革です。

フィンテック・ベンチャーにより、従来の業務領域が浸食されていることに加え、低金利と資金需要の減退が慢性化する環境下、地方銀行の整理統合論が強まる中で、銀行の事業会社化を推し進めることは、整理統合とはまた異なるアプローチにて、新しい金融機関の在り方を創り出す試みであると評価できそうです。

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