行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

令和8年金商法改正案と暗号資産規制等

2026/04/17

このページの目次
令和8年金商法改正案の国会提出投資助言・代理業及び投資運用業への影響暗号資産取引業の創設仲介業務と暗号資産管理関係業務登録要件と業規制特定暗号資産特定投資家私募等の範囲拡大

令和8年金商法改正案の国会提出

政府は令和8年4月10日付で金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案を第221回国会に提出しました。その主たる内容は、暗号資産取引に係る規制の整備、特定非財務情報の開示及び監査証明に係る制度の整備、成長資金供給の拡大に係る開示制度の見直し及び有価証券に係る不公正取引規制等の見直しの四つです。

金融商品取引業者や暗号資産交換業者にとって実務上特に重要なのは、暗号資産取引に係る規制の整備に伴う暗号資産業務の金融商品取引業への移行及び成長資金供給の拡大に係る開示制度の見直しに伴うプロ私募の範囲変更だと思います。

とりわけ暗号資産取引業が新たな概念として金融商品取引業に含めることとなったことは驚きです。

金商法の制定された平成十九年から数えて二十年近く、金融商品取引業は、第一種金融商品取引業第二種金融商品取引業投資運用業及び投資助言・代理業の四業態のいわば「四兄弟」でやってきたところ、今になって新たな兄弟が増えるような話です。報道で予めわかっていたこととはいえ新鮮な発見に満ちています。

投資助言・代理業及び投資運用業への影響

改正案では暗号資産に関連する条文は定義条項も含めて資金決済法からほぼ削り取られています。これにより暗号資産の売買等業務は、資金決済法に基づく暗号資産交換業ではなく、完全に金融商品取引法に基づく暗号資産取引業としての規制へと移行します。

既存の金融商品取引業への影響として注目されるのは、投資顧問契約を定義する、改正金商法案第2項第8項第11号ロに「暗号資産の価値等(暗号資産の価値、オプション(暗号資産又は暗号資産指標(暗号資産の価格若しくは利率その他これに準ずるものとして内閣府令で定めるもの又はこれらに基づいて算出した数値をいう。ロにおいて同じ。)に係るものに限り、有価証券関連オプションに該当するものを除く。)の対価の額は暗号資産指標の動向をいう。)」が追加されたことです。また、同ハでは暗号資産の投資判断も投資助言と位置付けられています。

さらに同第12号、第14号及び第15号では、投資運用業に該当する運用行為に関しても、有価証券若しくは暗号資産又はデリバティブ取引に関するものと明記されています。

これにより暗号資産による投資助言や投資運用行為は、有価証券又はデリバティブ取引と同様の投資助言・代理業・投資運用業の規制対象になることが明確になりました。現物暗号資産の投資顧問業者は、公布日から1年以内とされる施行日までに金融商品取引業登録が求められることになります。

暗号資産取引業の創設

新たな金融商品取引業として改正金融商品取引法案第2条第8項の以下の各号の業務が、暗号資産取引業として新たに金融商品取引業と位置づけされてます。

金融庁はこれを「暗号資産の売買、特定暗号資産の募集・売出し、暗号資産の借入れ等を業として行うことについて、金融商品取引業に含めることとする。(第二条第8項関係)」と解説しています。

18 暗号資産の売買(他の暗号資産との交換を含み、デリバティブ取引に該当するものを除く。以下同じ。)
19 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
20 特定暗号資産の引受け(特定暗号資産取得勧誘等(第52項に規定する特定暗号資産取得勧誘等をいう。第22号において同じ。)に際し、第五十三項各号に掲げるもののいずれかを行うことをいう。)
21 特定暗号資産の募集・売出し
22 特定暗号資産取得勧誘等の取扱い
23 その行う第十八号から前号までに掲げる行為に関して、顧客から金銭の預託を受けること。
24 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)
25 暗号資産の借入れ

このうち、いわゆるウォレットサービスにあたる第23号及び第24号は、暗号資産等管理業務と位置付けされています。また、暗号資産取引業のうち、暗号資産の借入れを業として行うこと等の暗号資産取引特例業務のみを行う者についての登録等の特例が適用され登録要件が緩和されます(第29条の6関係)。

仲介業務と暗号資産管理関係業務

改正金融商品取引法案第2条第11項では、金融商品仲介業者は暗号資産取引業者からの委託を受けて前掲の19号及び22号の媒介又は取扱いを行うことができるとしています。これは電子決済手段・暗号資産サービス仲介業の後継となる制度です。

また、金融商品取引業者に対し顧客の暗号資産の管理に必要な情報システムを継続的に利用させる等の業務については、暗号資産管理関係業務として位置付けがなされました。同業務を行う者に関して、内閣総理大臣への届出、善管注意義務、業務管理体制の整備義務、監督上の処分等の規定の整備が行われます(第2条第54項、第55項、第3章の6関係)。

登録要件と業規制

暗号資産取引業の登録要件や業規制に関しては、第一種金融商品取引業と類似する規制が敷かれます。

暗号資産取引業者は兼業規制の対象となります。届出なしで実施できる付随業務としては、暗号資産の貸付け又はその媒介若しくは代理、暗号資産信用取引に付随する金銭の貸付け、顧客のために管理する暗号資産を担保とする金銭の貸付け、暗号資産に関する顧客の代理、暗号資産累積投資契約、暗号資産に関連する情報の提供又は助言、他の金商業者の業務代理、顧客情報の同意提供、経営資源等活用にかかる府令指定業務が定められています。

また、届出業務としては、電子決済手段等取引業、電子決済手段サービス仲介業が定められています。

これらの他の業務に関して、金融庁は「金融商品取引業及び金融商品取引法第三十五条の二の二第一項又は第二項の規定により行う業務以外の業務を兼業しようとする場合、あらかじめ内閣総理大臣に届け出ることを義務付ける。(第三十五条の二の二関係)」としています。

また、金融庁は業務管理態勢の条文を追加して「金融商品取引業者に対し、暗号資産取引業を適確に遂行するための業務管理体制の整備を義務付ける。(第35条の3関係)」としています。

その他、必要な基準に適合しない暗号資産の取扱いの禁止(第43条の7関係)、暗号資産管理関係業務提供者以外の者から暗号資産管理関係業務の提供を受けることの禁止と、当該業者から当該業務等の提供を受ける場合には、当該業者の指導その他の業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置を講じることの義務付け(第43条の12関係)、委託先等への指導(第43条の13関係)、分別管理(第43条の14関係)、履行保証暗号資産(第43条の15関係)、顧客の暗号資産を担保に供する行為等の制限(第43条の16関係)、対象暗号資産の弁済(第43条の17関係)等が定められています。

また、財務に関して金融商品取引責任準備金の積み立て(第46条の5関係)及び自己資本規制比率の算出等を義務付け(第46条の6関係)により第一種金融商品取引業と同等の規制が敷かれることになります。

特定暗号資産

改正金融商品取引法案第2条第48項では「暗号資産」の定義条項が置かれています。内容的には資金決済法以来の馴染みの定義内容が金融商品取引法に移植された格好です。

続く同第49項では、特定暗号資産の定義が置かれており、暗号資産の中でも特定の者のみが当該暗号資産を発行する権限を有するものに関して、特定暗号資産と位置付けされました。特定暗号資産は開示規制等の対象になっています。金融庁は、具体的には以下のように解説しています。

ロ 特定暗号資産発行者に対し、特定暗号資産の募集・売出しにつき特定暗号資産情報の公表を義務付けるとともに、特定暗号資産の募集・売出し後の特定暗号資産定期情報及び特定暗号資産臨時情報の公表を義務付ける(第二十七条の三十九、第二十七条の五十、第二十七条の五十一関係)、

ハ 特定暗号資産情報が公表されている特定暗号資産の暗号資産売買等業務を行う金融商品取引業者に対し、当該業務開始時における特定暗号資産情報等の公表を義務付けるとともに、当該業務期間中における特定暗号資産発行者が新たに公表した特定暗号資産情報等の公表を義務付ける。(第二十七条の五十三関係)

ニ 特定暗号資産発行者に対し、特定暗号資産の募集・売出しに関して公表する特定暗号資産情報について、当該特定暗号資産の募集・売出しに応じて特定暗号資産を取得し、又は買い付ける者が払い込む額が少額である場合を除き、監査証明を受けることを義務付ける。(第二十七条の五十九関係)

ホ 特定暗号資産情報が公表されていない暗号資産の暗号資産売買等業務を行う金融商品取引業者に対し、当該業務開始時における暗号資産情報の公表を義務付けるとともに、当該業務期間中における暗号資産臨時情報の公表を義務付ける。(第二十七条の六十、第二十七条の六十一関係)

ヘ 虚偽の特定暗号資産情報を公表した特定暗号資産発行者等に係る民事責任、課徴金の規定の整備を行う。(第二十七条の四十一~第二十七条の四十八、第二十七条の六十六、第二十七条の六十七、第百七十二条の十三~第百七十二条の十九関係)

金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案要綱

特定投資家私募等の範囲拡大

金融庁は、改正法案であわせて成長資金供給の拡大に係る開示制度の見直しとして、特定投資家私募等にかかる規制を変更しています。特定投資家私募等の範囲が広がることは大いに注目に値するものです。

具体的には、特定投資家のみを相手方とする私募等に係る勧誘対象者の範囲を拡大する(第2条第3項、第4項関係)とされており、特定投資家向け私募及び私売出し該当する範囲を、特定投資家から、特定投資家、特定投資家以外の法人、特定投資家に移行可能な個人まで広げています。

これは法人相手であれば人数関係なく私募を行うことを可能とするものであり、実務上大きなインパクトがあります。金融庁は説明資料において、これを「プロ投資家になるための移行手続を行っていないものの、プロ投資家の要件を満たし、高い情報分析能力等を有する者に対し、簡易な情報提供でのプロ向けの勧誘制度の利用を可能とする(ただし、仲介する証券会社には適合性原則等の行為規制が適用)」と解説しています。

また、同様に企業が自社及び子会社の役員・使用人に対し、株券・新株予約権証券を交付する際の勧誘を、上場・非上場にかかわらず、募集・売出しから除外する(第2条第3項、第4項関係)として関係者への勧誘を私募私売出しに位置付けしています。

さらに、有価証券届出書の提出免除基準を1億円から5億円に引き上げる。(第4条関係)、少額募集に係る有価証券届出書(簡易な様式による有価証券届出書)を利用できる募集の範囲を発行価額総額が5億円未満の募集から10億円未満の募集に引き上げる。(第5条関係) ものとして、従来と比べて企業の資金調達に係る開示規制を大きく緩和しています。

お気軽にお問い合わせください

お電話無料相談窓口 03-6434-7184 受付時間 : 9:00 -17:00  営業曜日 : 月〜金(除祝日)
メール無料相談窓口メールでのご相談はこちらをクリック