行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

投資運用業の調査とモニタリングにおける善管注意義務及び忠実義務

2022/02/03

令和4年1月28日に公表された、投資運用業の某社に対する行政処分では、投資一任契約を締結した顧客のために善良な管理者の注意をもって投資運用業を行っていない状況及び公募投資信託の受益者のために善良な管理者の注意をもって投資運用業を行っておらず、忠実に投資運用業を行っていない状況に関して、関東財務局より処分が行われました。

近年、投資運用業の善管注意義務及び忠実義務に関連して、主にファンドオブファンズの形態のケースで、投資先の状況把握やモニタリングが強く求められるようになっており「投資先の詳細は把握していません」では済まなくなっています。

昨年末には、自社設定の投資信託を通じて外国投資法人投資証券を取得するスキームを採用していた別の投資運用業者に対して、自ら設定した本件投資信託の実態を解明できておらず、運用財産の運用方法や管理方法等について十分な調査・検討を実施・継続していく態勢を整備したと認められないこと理由として、登録取消が行われました。

投資運用業は、現在国策として日本政府が育成に取り組んでいる業態であり、投資運用業者の国民の資産形成において果たす重要な役割が近年改めて見直されています。

それがゆえ、新規の参入のハードルは低下し、規制は年々効率的になっているのですが、その反面、投資運用業者としての行為規制の根本的である、善管注意義務と忠実義務の遵守の要請は、むしろ以前よりも高まっているといえます。

今回の行政処分では、商品特性の調査に関して(1)多数の中小企業等に融資を行い、その元利金の返済を運用成果とするファンドにつき、当該海外運用会社の組織体制やファンドの概要等の形式的な確認にとどまり、当該ファンドの具体的な融資先すら把握しておらず、融資の回収可能性の検証もしていない(2)為替ヘッジなしのファンドにもかかわらず為替ヘッジ付きのシェアクラスが存在すると誤認(3)プライム・ブローカーにおける顧客資産の分別管理の状況を未確認(4)ファンドの投資対象企業の実在性を裏付ける情報を未確認であることが、処分事由に上げられています。

また、同じく一任業務では、時価評価体制に係る調査(事後モニタリング)にも不備を指摘されています。

これらは、内容的に投資運用業(一任)の範疇であると同時に、仮にこれらが一任業務ではなく、ファンドの私募の取扱業務だったとすると、虚偽表示や誤解を生じせしめるべき行為として行政処分されていても違和感がないと感じます。

再投資を前提とするオルタナティブ投資を中心とした資産運用ビジネスは、形式上の登録が第二種金融商品取引業であっても投資運用業であっても、またはその両方であっても、結局同じような業態特性と規制上の課題に収斂すると言えるかもしれません。

 

お気軽にお問い合わせください

お電話無料相談窓口 03-6434-7184 受付時間 : 9:00 -17:00  営業曜日 : 月〜金(除祝日)
メール無料相談窓口メールでのご相談はこちらをクリック