第一種少額電子募集取扱業務(株式投資型クラウドファンディング)を巡る制度改正

2021/11/19

今後の成長資金の供給のあり方として、かねてより制度改正が議論されていた、株式投資型クラウドファンディング(エクイティー・クラウドファンディング)に関する制度改正のパブリックコメントが、先月10月11日付けにて公表されています。

エクイティー・クラウドファンディングは、アメリカを中心として大きな盛り上がりを見せており、国内でもエクイティー・クラウドファンディングに相当する「第一種少額電子募集取扱業務」の制度活用に向けた機運が高まっています。

第一種少額電子募集取扱業務のみを行う業者は、第一種金融商品取引業者としてではなく、登録要件等が一部緩和された第一種少額電子募集取扱業者としての登録を受ければいいこととなっています。現在の制度枠組みで第一種少額電子募集取扱者として登録を受けている事業者は6社のみであり、参入業者数は必ずしも多くありません。

株式投資型のクラウドファンディング(電子申込型電子募集取扱業務)を行う「第一種少額電子募集取扱業務」では、法令及び日本証券業協会規則で、募集の際に、いわゆる少額要件(発行総額1億円未満、投資家一人当たりの投資額 50万円以下(案件毎))を満たすことが求められています。


市場制度ワーキング・グループ

パブリックコメントに先立ち、令和3年6月18日に金融審議会が公表した市場制度ワーキング・グループ第二次報告では、(i)発行総額1億円未満の算定方法の見直しに関して「現在の規定では、合算の対象が株式投資型 CF での発行額だけに限定されていないため、過去1年以内に他の資金調達を行っている場合には、株式投資型 CF のみで上記の発行総額の上限までの資金調達を行うことはできない」ために「発行総額の算定に当たり、合算の対象を株式投資型 CF での発行額のみに限定することが適当」とはしたものの、1億円の上限は維持することが適当としました。

また、(ii)投資家の50万円未満の投資上限額のあり方の見直しに関しては「特定投資家については、成長資金の供給の円滑化の観点から、投資上限額を撤廃することが適当」とする一方で「一般投資家の投資上限額の見直しについては、今後の投資状況等を見極めた上で慎重に検討」として、一般投資家向けの上限引き上げには後ろ向きな意見が示されました。

続く、(iii)少人数私募の人数通算期間の見直しは、クラウドファンディングに限らず、証券実務上かなり重要な議論で、「開示規制において、勧誘対象者数が過去6ヶ月間で通算して 50 名未満となる有価証券の取得勧誘は、少人数私募として、発行者の有価証券届出書の提出義務が免除されている」が「株式投資型 CF の後に少人数私募を実施する場合に限らず、少人数私募の取得勧誘対象者数の通算期間を6ヶ月から3ヶ月に短縮することが適当と考えられる。 」として、少人数私募全般の通算期間を、現在の半分に短縮することを打ち出しました。


政令案及び内閣府令案・私募要件

いわゆる第一項有価証券及び電子記録移転権利(STOトークン)の少人数私募の要件について、従来6か月間で49名が少人数私募における勧誘人数の上限であったところ、今回パブリックコメントに付された改正案では、新金融商品取引法施行令案第1条の6で、その通算期間を3か月間に短縮しています。

いわゆる「49私募」全般にかかる改正案であり、改正案の施行後には、証券会社等での少人数私募の勧誘人数管理の方法が変わることになります。

併せて、新金融商品取引法第二条の定義に関する内閣府令案第13条では、新株予約権の枚数又は単位制限の通算要件に関し、同じく期間が6か月から3か月に短縮されています。

新企業内容等の開示に関する内閣府令案第2条では、有価証券届出書の提出を要しない少額の募集の要件である1億円未満の通算期間を、同じく6か月から3か月に短縮しました。なお、こうした場合でも1000万円を超える場合には、有価証券通知書の提出をする必要があります。

新外国債等の発行者の内容等の開示に関する内閣府令案第1条の2でも、同じく有価証券届出書の提出を要しない少額の募集の要件である1億円未満の通算期間に関して、同じく6か月から3か月に短縮しました。

なお、経過措置により、これらは施行日以降に開始した取得勧誘が適用対象になり、施行日以前に開始した取得勧誘は従来の6か月の通算期間が適用されるとなっていますので、注意が必要です。

あわせて、当局のガイドラインである企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)も改正案が示されています。

政令案及び内閣府令案・第一種少額電子募集取扱業務

新金融商品取引法施行令案第15条の10の3では、第一種少額電子募集取扱業務における投資家当たりの上限額の制限は、特定投資家はその対象外であることが明示されました。

さらに、新金融商品取引業等に関する内閣府令案第16条の3では少額電子募集の発行価額の総額規制に関して「第一種少額電子募集取扱業務又は第二種少額電子募集取扱業務としてその募集の取扱い又は私募の取扱いが行われるものに限る」としており、発行者がクラウドファンディング以外で調達した資金は、上限1億円未満の規制の計算対象から除外されました。なお、1億円の通算期間が過去1年間であることは維持されています。

なお、経過措置により、こちらも施行日以降に開始した取得勧誘が適用対象になり、施行日以前に開始した取得勧誘は従来の6か月の通算期間が適用されるとなっています。


成長資金供給としての実効性

総じて、今回の制度改正における第一種少額電子募集取扱業務への規制緩和は非常に小幅なものに留まった印象があります。第一種少額電子募集取扱業務における取扱高の劇的な増加や業界の急速な成長に繋がる可能性は高くなさそうです。

とはいえ市場ワーキンググループは報告書で「現状において多くの投資家の投資額は 10 万円台であることや一般投資家が非上場企業の目利きをするのは難しいこと、これまでの成立案件のほとんどがいまだ投資継続中であり、株式投資型 CF の投資リスクを検証するには時期尚早であること」を指摘しています。

規制当局にとって、一般消費者への株式投資型クラウドファンディングへの参入は、現時点で必ずしも諸手を挙げて歓迎すべき事柄ではなく、業界活性化にアクセルを踏み込むことはしないという総合的判断に基づく政策決定なのだと考えられます。


エクイティークラウドファンディングの業態考察

第一種少額電子募集取扱業者は、登録審査の際に、取扱い有価証券に関して高度の態勢構築を求められます。そのため、少ない登録済業者の裏の暗数として、ITスタートアップ企業を中心として、登録を希望しつつも、中途で断念した企業がかなり多い印象があります。

また、同じく本邦に参入を検討する海外事業者は、現在の規制枠組みを検討の上で、登録を断念することが多いように思います。我が国の規制思想を的確に理解した上で、規制当局の求めるレベル感の態勢を構築するのは、IT企業や外資にとっては容易ではありません。

事業収益性

エクイティークラウドファンディングには事業自体の収益性の課題もあります。

投資型クラウドファンディング・貸付型クラウドファンディング・株式投資型クラウドファンディング等の「金融クラウドファンディング」で、現状発見されている勝ちパターンは、実物資産を背景とするため比較的安定してリターンを出せる不動産クラウドファンディング又は有担保貸付型クラウドファンディング業務で、預かり資産額を増やしていくことです。

※ただし、貸付型クラウドファンディングに関しては、近年の不祥事続発で、業態の継続性に疑問符が投げかけられている面もあります。

これに対し、事業型ファンドのクラウドファンディング(第二種金融商品取引業)は、高利回りを期待できる事業投資を発見するのが困難であり、収益性がある事業があっても、貸付型と異なり資金吸収力に限界がある(例えば太陽光ファンドに100億、1000億の資金を集めても良質な案件を十分確保できない)という問題があります。これには、おそらく、世界的な金融緩和のカネ余りに加えて先進国における経済成長率及び投資収益性の長期的な低下という構造的な問題が背後にあります。

株式投資型クラウドファンディングに関しては、そもそも成長性を期待できる株式の発行者を、事業者がどれだけ発掘、審査できるのかという問題があります。さらに、投資家が投資した金額が、すぐには金を生まない未上場企業に固定されてしまうため、預り金額が増えるとともにプラットフォームの収益が増大する「ストック型ビジネスモデル」とならない点に、一定の限界があります。現在の規制枠組みでは、第一種少額電子募集取扱業者が高い収益を上げていくには、常に多数の案件を取扱って、新規資金を集め、いわばずっと走り続けなければいけません。

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