2021/07/09
令和3年7月7日付で、「金融所得課税の一体化に関する研究会」(第3回)議事次第の公表についてが公表されています。配布資料で「金融所得課税の一体化に関する研究会論点整理(案)」が明らかにされており、金融所得課税の方向性が明らかになりました。
本研究会は、令和3年度与党税制改正大綱において、「デリバティブを含む金融所得課税の更なる一体化については、総合取引所における個人投資家の取引状況等も踏まえつつ、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境を整備する観点から、時価評価課税の有効性や課題を始めとして多様なスキームによる意図的な租税回避行為を防止するための実効性ある具体的方策を含め、関係者の理解を得つつ、早期に検討する。」との記載が盛り込まれたことに対応するものです。
いわゆる総合取引所構想に対応するもので、報告書案は「デリバティブ取引についても損益通算の対象に含めることにより、既に損益通算の対象となっている金融商品とデリバティブ取引との間で課税の公平性・中立性を図ることにつながり、また、両者の税制上の取扱いの差異がなければ、簡素で分かりやすい税制の実現にもつながると考えられ」「分散投資の促進や、公平・中立・簡素な金融所得課税の実現という観点から考えれば、金融所得課税の一体化の対象として、デリバティブ取引全体とすることが望ましい」としています。
しかしながら、「 現在、個人投資家において株式取引が広範に行われており、このヘッジ手段として有効なデリバティブ取引については、政策目的に照らし優先度が高く、 市場デリバティブ取引については、取引所での市場流動性を通じた価格・取引の透明性等が担保されていることから、金融機関や税務当局の実務において問題が発生する可能性が低い、といった観点から、まずは、「有価証券市場デリバティブ取引」について損益通算の対象としていくことが適切と考えられる」のことで、結局金融所得課税の一体化の対象は、市場デリバティブのみに限定されることになりました。
業界の取引の多く占める店頭CFD取引を行う投資家や、くりっく365で通貨関連店頭デリバティブ取引を行う投資家にとっては、メリットを享受できない改正となります。
金融庁は、今年の税制改正要望でも業界から要望のあった暗号資産現物や暗号資産関連デリバティブ取引の分離課税について要望に加えていないなど、本件に限らず金融庁は有価証券関連市場デリバティブ取引以外の取引、とりわけ店頭デリバティブ取引に関しては、その社会的意義に依然として懐疑的で慎重な姿勢のようです。