2020/10/02
金融庁は、9月30日付けで令和3年度税制改正要望項目を公開しています。
金融商品取引業との関係では「国際金融ハブ取引について、金融事業者・高度金融人材が日本に参入しやすくするための税制上の措置を講ずること」「金融商品に係る損益通算範囲をデリバティブ取引・預貯金等にまで拡大すること」「一定の事業再生ファンド(金融庁長官及び経済産業大臣による指定)の債権放棄について企業再生税制を認める特例措置を復活させること。」「不動産投資法人における未収賃料の特例について一定の未収賃料について、①導管性要件の判定式から除外すること。また②一定期間にわたる調整措置を設けること。」「Jリート及び特定目的会社に係る登録免許税及び不動産取得税の特例措置の延長等」の要望がとくに注目されます。
他方、業界団体から要望が寄せられていた暗号資産取引に関しての総合課税から分離課税への変更は今年も金融庁からの税制改正の要望から外されています。
金融庁としては、暗号資産関連ビジネスは、政策的に保護育成を重点に監督すべき業態とは考えておらず、また、国民の長期的な資産形成において暗号資産は有益なアセットクラスとは考えていないということなのだと思います。
暗号資産に関する決済手段や投資対象としての有益性が必ずしも確立されていないと考えられる現在、利用者保護上、暗号資産を税制面からも政策的に保護すべき金融資産と位置付けないという当局のスタンスは、一定の合理性を有するものと考えます。
他方、国際競争上及びイノベーション促進の観点からは、こうした当局の腰の引けた姿勢を危ぶむ声もあります。
次世代技術の導入促進か、利用者保護かは両立が難しいテーマですが、デジタル化を掲げる新政権の活動が本格化していく今後、こうした暗号資産関連規制分野に、新たな動きが出てくるか注目されます。