行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

給与ファクタリングの論点

2020/09/11

昨日付で、金融庁から「ファクタリングに関する注意喚起の公表について」が発表されています。

金融庁は、同公表文で「個人が勤務先に対して有する給与(賃金債権)を対象とした「給与ファクタリング」を業として行うことは、貸金業に該当(貸金業登録が必要)。」との見解を明らかにしていますが、これは既に令和2年2月28日付けの照会に対する令和2年3月5日付のノーアクションレターで明らかにされている法解釈をなぞったものです。

金融庁は、給与ファクタリングに関して、「労働者が賃金債権を譲渡した場合でも、労働基準法の規定により、使用者は直接労働者に対し賃金を支払わなければならず、賃金債権の譲受人は、自ら使用者(労働者の勤務先等)に対してその支払を求めることは許されないと解されているため、給与ファクタリングにおいては、賃金債権の譲受人は、常に労働者に対してその支払を求めることになります。そのため、給与ファクタリングでは、譲受人から労働者への金銭の交付だけでなく、譲受人による労働者からの資金の回収を含めた資金移転のシステムが構築されているということができ、これは経済的に貸付けと同様の機能を有しているため、給与ファクタリングを業として行うものは、貸金業に該当すると考えられます。」と解説しています。

実際、給与ファクタリングを巡っては、今年に入って大阪府警が貸金業法違反(無登録営業)と出資法違反(超高金利)の疑いで、初摘発を行ったと報じられています。

一方で、「グレーゾーン解消制度」に基づく、経済産業省による平成 30 年 11 月8日付の給与前払いサービスに関する照会に対して、金融庁は「本サービスは従業員の勤怠実績に応じた賃金相当額を上限とした給与支払日までの極めて短期間の給与の前払いの立替えであって」「導入企業の支払い能力を補完するための資金の立替えを行っているものではなく」「手数料についても導入企業の信用力によらず一定に決められているとの前提の下では、導入企業又は従業員に対する信用供与とは言えず、また、導入企業においても、信用供与を期待しているとまでは言えないことから、貸金業法上の「貸付け」行為に該当せず、貸金業に該当しないものと考えられる。」と平成30年12月20日付けの確認の求めに対する回答の内容の公表をしています。

つまり、給与ファクタリングと給与前払いサービスは、同じように労働者の給与の早期の現金化を目的とする法律行為であっても、「労働者に対して実質的に貸付と同等の行為を行う」ものである給与ファクタリングと、「事業者に対する立替払役務」である給与前払いサービスは、経済的機能及び信用供与の有無が異なるため、貸金業法の適用の有無が異なるとことになります。

貸金業法の適用の有無を判断する基準が、「信用供与に該当するかどうか」「経済的に貸付けと同様の機能を有している否か」であることは、給与債権以外のファクタリングにおいても、買戻し特約付きのファクタリング(リコースファクタリング)に関しては、貸金業に該当すると考える従来の実務上の理解と整合的です。

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