金融業界ではこの数年にわたり、暗号資産(いわゆる仮想通貨)に対する投資信託の組成に関して、どのような制度設計がなされるか、議論になっていました。
これに対して、金融庁は9月30日付けにて、「「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表について」において、投資信託や投資法人の特定資産以外の資産を投資対象の一部とする投資信託等の組成や販売についての留意事項の案を公表しています。
同案では、投資信託や投資法人が、非特定資産等(仮想通貨及び仮想通貨への投資ファンドを含む)への投資を投資目的として定めることを禁止するとともに、投資目的資産以外の非特定資産(含む仮想通貨)への一部資金の投資の際にも、以下の事項を禁止することとしています。
(1)価格変動や流動性等のリスクが高い非特定資産等への投資
(2)非特定資産を連想させるような名称が付された商品を販売すること
(3)非特定資産への投資を強調した勧誘を行い販売することの禁止
(4)投資家が非特定資産等の保有リスクを負うにもかかわらず、十分なリスク説明や顧客の理解度を確認しないまま、理解度が不十分な顧客に対し販売すること
金融庁は同時に、「例えば、今後、暗号資産(仮想通貨)等を投資対象とする金融商品が組成されることも予想されますが、暗号資産への投資については、投機を助長しているとの指摘もあり、当庁としては、このような資産に投資する投資信託等の組成・販売には慎重に対応すべきであると考えています。」との見解を公表しています。従来の議論に対する結論として、仮想通貨投資信託は完全禁止とまではいえないものの、事実上の禁止に準ずることとしたと考えられます。
現時点で、第二種金融商品取引業においては、仮想通貨関連事業を出資対象事業とする集団投資スキームの組成も事実上抑制されていますが、今後、集団投資スキームの場合も、投資信託に準じてその組成の準禁止方針が採用されるか、監督動向が注目されます。