行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

令和4年犯罪収益移転危険度調査書

2022/12/16

令和4年12月1日付けで、犯罪収益移転防止対策室(JAFIC)のwebサイトで令和4年度の犯罪収益移転危険度調査書が公表されています。去年からカラー化された表紙ですが今年は一層鮮やかな色です。

金融商品取引業と取引時確認に関する記事でも解説しましたが、金融商品取引業者は、犯罪収益移転防止法第11条に基づいて「犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案して講ずべきものとして主務省令で定める措置」を講ずる努力義務があります。

危険度調査書は、年次報告書とともに、毎年で警察庁から公表されています。特定事業者が直面するマネーロンダリングやテロ資金供与に関する様々なリスクに関して、詳細に説明がなされています。犯罪収益移転防止法上の特定事業者である金融商品取引業者は直近の犯罪収益移転危険度調査書を参照して、自ら作成する特定事業者作成書面等の作成に反映させる共に、実効的な社内体制の整備に努める必要があります。


出典:犯罪収益移転防止対策室(JAFIC)webサイト

情勢変化を踏まえた主な変更点

同調査書では近時の情勢変化を踏まえた主な内容の変更点について、以下のように解説しています。

令和4年調査書は、昨年から構成等に大きな変更等はないが、国内外の情勢の変化、FATF による第4次対日相互審査の結果等を踏まえ、記載内容の更新や充実を図った。記載内容の更新や充実を図った主な点は、次のとおりである。
① 法執行機関や関係省庁からの情報を積極的に活用し、警察以外の捜査機関等における疑わしい取引の届出の活用状況や、非営利団体(NPO)を所管する行政庁によるリスク評価、所管行政庁が新たに認識した脅威・脆ぜい弱性等について新たに記載した。
② FATF レポート等を参照し、国際的に関心が高まっている環境犯罪、暗号資産をめぐる国際的な動向、我が国を取り巻く状況等について紹介した。
③ 外国との取引が悪用された手口や法人に関する情報等を整理するとともに、マネー・ローンダリング事犯の事例を更新し、我が国におけるマネー・ローンダリング等リスクについて記載の充実を図った。
なお、本年調査書では、マネー・ローンダリング等対策を推進するため所管行政庁等で作成・公表しているガイドライン等について紹介しているほか、令和3年中における所管行政庁、業界団体及び特定事業者のマネー・ローンダリング等対策に係る取組についても記載し、さらに、犯罪収益移転防止法等の改正を踏まえ、いわゆるステーブルコインや高額電子移転可能型前払式支払手段等についても新たに記載した。

犯罪収益移転危険度調査書(令和4年版)

国・地域と危険度

国・地域と危険度の項目に関しては、北朝鮮及びイランに対する対抗措置に関して引き続き言及されているところ、令和4年10月21日にFAFTのブラックリスト入りしたミャンマーに関しては、危険度を高める要因として、直接の言及は避けられています。

行政として、ミャンマーについて一概に北朝鮮及びイラン同様の取扱いを求めるものではなく取引の危険度等に応じて特定事業者が自ら判断することを求めるものです。

金融商品取引業に関連する論点

金融商品取引業者等及び商品先物取引業者が取り扱う有価証券の売買の取次ぎ等に関しては同調査書は事例として「強盗により得た犯罪収益を、親族名義の口座に入金した後、親族名義で開設したFX口座に証拠金として入金した」例が追加されています。

また、所管行政庁のガイドライン等の言及に関しては、同調査書で詳細を解説するのではなく、リンクを示す形となり、昨年と比べて記載が整理、簡略化されています。

総じて、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策の観点からは、金融商品取引業者は必ずしも相対的に高いリスクに直面し又は課題を抱えている業態とは捉えられていないようです。

暗号資産に関する論点

これに対して、同調査書は「特定事業者が取り扱う商品・サービスのうち、預金取扱金融機関、資金移動業者及び暗号資産交換業者が取り扱うものを、他の業態のものよりも相対的に危険度が高いものと評価」しています。

また、暗号資産関連事例では「無許可の金融商品取引業者による金融商品の取引に暗号資産が用いられた事例が記載されているのが、金融商品取引業との関係で目に留まります。

とりわけ海外を拠点として無登録営業を営むFXバイナリーオプション取引業者は、正規のswiftを利用した国際送金で顧客資金を受け入れることが事実上困難であることから、常に脱法的な方策を模索しています。

こうした事例では、以前から、各種資金移動サービス(国内で資金移動業登録を受けていない者を含む)や、クレジットカードが多く利用されてきました。これに対し、近年ではこれらに代わって暗号資産が送金手段として利用されるケースも増えています。

お気軽にお問い合わせください

お電話無料相談窓口 03-6434-7184 受付時間 : 9:00 -17:00  営業曜日 : 月〜金(除祝日)
メール無料相談窓口メールでのご相談はこちらをクリック