行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

資産運用業者等及びFX業者の監督論点

2022/11/19

金融商品取引業者等にとって、規制当局の動向を把握してその関心事を理解することは、企業存続にも関わる重大事項です。そのためには、当局からのリリースや報道等を普段から注視することが必要です。

その点、金融庁は、令和4年11月16日付で、業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点として、[令和4年 10 月 26 日開催 日本投資顧問業協会]及び[令和4年 10 月 13 日開催 金融先物取引業協会]の資料を公表していますので、押さえておく必要があります

投資運用業及び投資助言・代理業

一般社団法人日本投資顧問業協会との意見交換会では、金融庁は、協会非加入業者に対する行政処分事例を取り上げ、法令等遵守の意識向上を訴えています。「協会においては、研修等により会員の法令遵守体制の構築を進めていただいているところであるが、引き続き法令遵守意識の向上に取り組んでいただき、法令違反行為の発生防止に協力いただきたい。」と呼びかけ、とくに投資助言・代理業者の法令等遵守状況が引き続きの課題であることを明確にしています。

また「国際金融センターの実現に向けた拠点開設サポートオフィスの取組みについては、2021年1月に同オフィスを開設して以降、本日(10月26日)までに、登録が計12件行われたところ、うち8件は、投資運用業又は投資助言・代理業の登録となっている」としており、重要施策に位置付けられている外国金融商品取引業者の誘致が一定の実績を挙げていることを強調しています。

さらに「2022年3月には一定の要件を満たす外国証券会社を英語登録等の対象に加えたほか、2022年10月末には組合型ファンドの販売勧誘等を行う二種業まで拡大する予定」であり、「今後も、内外の参入を希望する資産運用会社等がスムーズに登録・入会手続きを行うことができるようにしていくことが重要であると考えて」いるとしています。

参入手続きのスムーズ化

「内外の参入を希望する資産運用会社等」に対する参入手続きのスムーズ化は、実務上、投資運用業登録の審査手続きの迅速化に繋がっています。そのため、直近において、大企業グループ等の社内態勢がしっかりした資産運用会社のケースでは、従来に比べて非常に迅速な金融商品取引業登録が可能になっています。

こうした金融商品取引業のうち特定の業態の登録の難易度は、時期により非常に差があります。投資運用業者の近年有数の大型不祥事であったAIJ事件や、証券取引等監視委員会の建議を契機にして投資助言・代理業の登録要件に人的構成が加わった平成20年代半ば頃は、資産運用会社等の登録審査が厳格化し、その新規参入が現在と比較して絞られていた時期もありました。

その時期の情報をもとに、投資運用業の登録には極めて長期間かかるのではないかと考えている方を散見しますが、直近の規制監督動向は大きく変化しており、態勢が盤石な事業者であればスムーズな参入が期待できます。また、投資運用業に付帯して集団投資スキームを募集又は私募並びに募集又は私募の取扱いをする第二種金融商品取引業の登録も審査は迅速化しています。

ただし、第二種金融商品取引業者でも、事業型ファンド、とりわけ貸付型ファンドに関連する事業者の登録審査は、現在、金融商品取引法施行後、最も厳格化された状況にあり、1年を大きく超える審査期間となることも珍しくありません。

金融先物取引業(FX業者)

一般社団法人金融先物取引業協会との意見交換会では、第一種金融商品取引業者のうち、外国為替証拠金取引(FX)を行う事業者に関して、今年の大幅な為替変動を踏まえた直近の業界の取り組み状況を金融庁が高く評価する姿勢が見られました。

金融庁は「2022 事務年度の金融行政方針における業界横断的なモニタリング方針に基づき「①経営基盤の強化と健全性の確保、②利用者目線に立った金融サービスの普及、③世界情勢等を踏まえた各種リスクへの対応」に関して、FX業界に対して以下の評価を示しています。

「① 経営基盤の強化と健全性の確保」に関しては、直近の円安で外国為替市場のボラティリティが高まっているなかで「ロスカット未収金の発生は一部のFX会員に限定されており、また、決済リスク管理態勢の強化のために導入されたストレステストの結果をみても、一定の財務健全性の確保に努めていただいていると考えている」と、ここまでの業界の在り方を肯定するとともに、引き続き、市場動向に細心の注意を払い、適切なカバー取引を行うなど、決済リスク管理態勢の強化に取り組んでいただきたい」と結んでいます。

また、「② 利用者目線に立った金融サービスの普及」に関しては、直近の為替の変動でFX顧客のロスカットが発生していると見られるなかでも「顧客への細やかな注意喚起等を実施していただいたこともあって、FXに係る苦情件数が増加している状況にはない。引き続き、顧客への分かりやすい情報提供など、顧客本位の業務運営に努めていただきたい」としており、同じく業界のここまでの取り組みを評価しています。

FX業界の成熟化

円安に振れると利益を得る個人投資家が多いという状況も関連していると思いますが、いずれにせよ、FX取引が金融先物取引法の改正で規制対象になったのが2005年、金融商品取引法の施行が2007年であり、15年以上が経過しています。

当初は様々な投資者保護上の課題が山積していた外国為替証拠金取引関連事業者が、今ではこれといった深刻な法令等遵守上の課題を挙げられることがなくなり、また、投資者に適切なサービスを提供できている現状には隔世の感があります。

平成10年に外為法改正により外国為替取引が自由化された結果、本邦で外国為替証拠金取引が立ち上がりました。20年以上前には、あたかも現在の暗号資産交換業界のように混沌としていたFX業界ですが、時を経た今では成熟と安定のフェーズに達しつつあります。

外国為替証拠金取引に対する新規参入は厳格に絞られており、外国為替証拠金取引を行う第一種金融商品取引業の新規登録は、事実上不可能に近い状態です。その反面、退場を促すような厳しい規制監督は行われていないことから、業界全体の動きはかつてより小さくなっています。

お気軽にお問い合わせください

お電話無料相談窓口 03-6434-7184 受付時間 : 9:00 -17:00  営業曜日 : 月〜金(除祝日)
メール無料相談窓口メールでのご相談はこちらをクリック