行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

FPの権限拡大の議論と非公開情報管理

2022/10/13

フィナンシャルプランナー(FP)の権限拡大

令和4年10月8日付のフィンテックジャーナルに、「【独自】ファイナンシャルプランナーの権限拡大を検討へ、金融庁には慎重論も」という記事が掲載されています。

記事によると、9月に開催された金融庁における有識者会議で「国民の金融リテラシーの向上と、老後に向けた安定的な資産形成をサポートするため、FPが担う職業上の役割やその権限を広げる選択肢が浮上」として、FPの権限拡大が議論されたとしています。

まだ金融庁のwebサイトではこれら審議会等の議事録が公開されていないのですが、記事では有識者会議での委員の発言が取り上げられています。

現在、投資助言・代理業等の登録がないと、FPの資格者であっても具体的な商品名(有価証券又はデリバティブ取引)への言及ができないと理解されていますが、記事では、これをFPに対して解禁するなどの具体案が上がっているとするとともに、FPの「「アドバイスの範囲を広げる」ための具体策としては、FPが投資助言・代理業に登録するハードルを引き下げる選択肢も浮上」していると報じています。

家計アドバイス業務の現状

現在、銀行や証券等の金融機関以外で、個人向けに家計に関するアドバイス業務を提供するビジネスの業態としては、FP、IFA(金融商品仲介業者)、投資助言・代理業者が主要業態になっています。

このうち、FPは個別銘柄に踏み込んで投資助言ができないという点で、行うことができる業務に限界があります。また、IFAは、記事でも書かれていますが、証券会社に所属する代理店であることにその限界があり、顧客利益と手数料稼ぎの間に利益相反の構造的な問題があります。

IFA手数料を売買手数料比例制ではなく、顧客の預かり資産金額に比例して計算するようにすれば解決できる問題ではありますが、多くの業者の金融商品仲介業者への報酬は、売買手数料ベースでの算定になっているが現状です。

こうした問題は、業界でも認識されており、顧客利益の追求の観点から、FP事務所からの投資助言・代理業の登録や、金融商品仲介業者からの投資助言・代理業への業態変更又は双方登録のご相談を頂くことも多くなっています。

投資助言・代理業の登録困難性

記事では「投資判断に踏み込んで実際的な助言を行い、その対価を受け取る契約を結ぶ場合には投資助言業の登録を受ける必要がありますが、個人開業のFPには登録のハードルが高すぎる」との指摘がなされています。

確かにFPを母体とする投資助言・代理業者の登録数は非常に少なくなっています。

そのため、記事では「委員が提案したようにFPの「アドバイスの範囲を広げる」ための具体策としては、FPが投資助言・代理業に登録するハードルを引き下げる選択肢も浮上」しているとしています。

もっとも、投資助言・代理業の登録要件は他の業態に比べて必ずしも極度に高いものではありません。供託金500万円や知識経験者の配置等の要件を充足できれば、FP事務所から投資助言・代理業者に移行する例も多く見られ、実際に当事務所でもこうした登録事例に関して複数の支援実績があります。

投資助言・代理業でも、FP業務をベースとする、対面且つ比較的富裕層向けの小規模業務であれば、知識経験者は1名でも投資助言・代理業の登録をする余地があるため、むしろ現状は、漠然とした「難しい」というイメージに基づいて、過度に登録が忌避されている傾向も見受けられます。

経験者の確保が課題

FPにとって、投資助言・代理業の登録で難しいのは金融商品取引業等(金融商品取引業者又は登録金融機関。場合によっては金融商品仲介業者でも可)での勤務経験が必要になることです。そのため、FP試験組や、保険代理店等を母体とするFP事務所は、こうした金融商品取引業者等への勤務経験要件が問題になって登録を断念することもよくあります。

とはいえ、規制緩和を論ずるにあたっては、FP業務や保険業務には職業専門性を有してはいるものの、個別の有価証券やデリバティブ取引に関しては、必ずしも職業的専門性が担保されていない事業者まで広く金融商品取引業者たる「投資助言・代理業者」として認めるべきなのかは、冷静な議論が求められるでしょう。

大手証券某社に対する行政処分

令和4年10月7日、メガバンクグループに属する大手証券某社に対して、主に以前から報じられていたブロックオファー取引を巡る問題を理由として行政処分が行われました。また、処分では、ブロックオファー取引に加え、銀行と連携して行う業務の運営が不適切な状況が指摘されています。

後段の話は、証券取引等監視委員会の処分勧告の寸前になって出てきた論点で、問題の端緒段階では業界内ではあまり意識されていませんでしたが、今回、持株会社のFGに対する行政処分が行われたこととあわせて、金融庁は本件を銀行やFGも含めたグループ全体の問題と見ていることが鮮明になりました。

非公開情報

行政処分では「金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号において、有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)は、当該金融商品取引業者又はその親法人等若しくは子法人等による非公開情報の提供について、あらかじめ発行者等の書面又は電磁的記録による同意がある場合等を除き、当該金融商品取引業者の親法人等若しくは子法人等と当該発行者等に関する非公開情報を受領又は提供してはならないとされている。」ところ、同社は「親法人等である〇〇銀行との間において、法人顧客から情報共有の停止を求められていること又は情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、当該法人顧客に関する非公開情報の授受を複数回にわたって行い、これを〇〇証券内で共有していた。」としています。

行政処分としては、実際の事例として、株式の売り出し、買収及び当該買収に伴う資金調達、TOBの3つが挙げられています。非公開情報の受領提供制限に関しては、先例が少ない分野でもあり、関係する事業者は先例としてよく研究しておく必要があろうかと思います。

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