行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社

第一種金融商品取引業者が行う投資助言・代理業の規制緩和論

2022/10/30

令和4年10月25日の日本経済新聞の報道によると、金融庁は、第一種金融商品取引業者投資助言・代理業を兼業する際の業規制に基づく義務及び禁止行為を規制緩和する方針であるとされています。

政府方針である家計の資産所得倍増を実現するための具体的な方策として、投資助言・代理業の規制緩和は、FPの権限拡大等とあわせて、すでに金融審議会の市場制度WGで論ぜられています。ある意味では、既定路線通りの制度改正です。

影響範囲の大きい主要な業規制の制度改正方針が決まった際には、金融庁は、まず日本経済新聞にリリースして世論の反応を見る傾向にあります。よって、第一種金融商品取引業者による投資助言・代理業への参入規制の緩和は、現時点での確度の高い政策方針と見ていいと思います。

もっとも、その具体的な内容は「投資助言業の登録申請書に載せる投資判断を行う職員名の記載を省略できるようにする。変更があった場合の届け出も不要になる。個々の助言に関わった職員名を記録しておく必要はあるが、契約者に交付する書面を部署名で代替できるようにする。」という、手続的規制に関する緩和が、報道では第一に挙げられています。

禁止行為の緩和

報道では、併せて禁止行為の一部解禁にも踏み込んでおり「兼業する証券会社には適切なリスク管理や利益相反の解消ができていることを条件に、証券担保ローンを含む金銭や有価証券の貸し付けを認める」としています。

これらの実務的なニーズの程度は不明ですが、いずれにせよ既存の第一種金融商品取引業者に対して、投資助言・代理業への参入に関し一定の促進効果があると思われます。

なお、現行法制下でも、投資助言・代理業の原則的禁止行為である金銭及び有価証券の預かりの禁止については、第一種金融商品取引業者は免除されています(有価証券等管理業務)。

また、供託金の供託義務も投資助言・代理業以外の種別の金融商品取引業の登録を受けている業者には適用されないなど、第一種金融商品取引業等と投資助言・代理業の兼業には、業規制の一定の緩和的規制が存在します。

しかしながら、政府はアドバイザーとしての投資助言・代理業者の社会的な有用性に鑑み、行為規制を一段と緩和したうえで、第一種金融商品取引業者の投資助言・代理業への参入を促すという方針を明らかにしました。

制度利用の見通し

現時点は、第一種金融商品取引業者で、かつ、投資助言・代理業を兼業する業者の業務フォーカスは、各種AM業務、ラップ及び自動売買関連等が主流です。

リテールの個人顧客に対するコンサルティングで、制度としての投資助言・代理業を活用して、昔ながらのセルサイドの業務と兼業しようという発想はとりわけ地場証券等の伝統的な証券会社には希薄だと思われます。

今回の制度改正は、こうした古い意識を上書きし、新しい「顧客本位の業務運営に関する原則」に資する有用な資産運用アドバイザー業務の確率に資するのか、業界側の動向が注目されるところです。

なお、記事では「助言によって顧客の資産が増えれば投資助言業に該当する可能性が高いが、対価を有償とするか否かの選択は各社に委ねられている。」とありますが、投資助言・代理業の該当性は有償性が要件ですので、投資助言の結果のパフォーマンスは業登録の要否には関連しません。

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